未婚の障害者が多く、「結婚できないのでは」と不安を感じやすい
精神障害・知的障害を持ち、不安を感じている未婚者が多い
障害を持つ未婚の方が多いです。内閣府の調査(平成25年)によると、身体障害を持つ未婚者は全体のおよそ3割と比較的少ないです(障害を持たない方の未婚の割合はおよそ2割)。
しかし、発達障害を含む精神障害を持つ未婚者がおよそ6割、知的障害を持つ未婚者はおよそ9割の方が結婚していません。
これは「結婚を求めていない」方も含みますので、必ずしも「結婚したくても、結婚できない」統計ではありません。しかし、多くの障害を持つ方が結婚に不安を感じているのではないでしょうか。
【体験談】発達障害者が相手を不安にさせる理由
どうしても、「障害者」という偏見を持つ方はいる
メディアなどで取り上げられている影響で、「障害者」という存在が身近になりました。偏見を持つ方も、最近はだいぶ少なくなりました。
しかし、現実として今でも「障害者」という偏見を持つ方はいます。
メディアなどでの情報のみを吸収し、実際に接していない方がいます。このような相手ですと、「自分とはかけ離れた人」と見られやすいです。筆者も障害者と話した瞬間に相手に拒否されたことも度々ありました。
経済的に問題がある
結婚を考えている方であれば、ほとんどの方は経済的な問題を意識しているのではないでしょうか。また事実と違っていた場合でも、障害を持つ方の経済的自立が難しいと解釈している方は多いです。
事実、筆者は結婚するまで実家で暮らしていました。仕事はしていましたが、一人暮らしできる経済力はありませんでした。「そんな給料で相手を養っていけるのか」と友人に怒られたこともありました。怒られてもどうしようもないので、悔しさしかありませんでした。
コミュニケーションなどに不安を感じやすい
障害の特性上、相手の性格を受け入れられず、「自分ルール」から見てしまいがちです。「自分とは全く違うルールが存在する」意識がないと、相手にも受け入れられることが難しくなります。
反対に自信を持てず、過剰相手に合わせようとすることもありました。相手にプレッシャーを与えてしまい、「重い」と言われたこともありました。
特性についての理解を得るのが難しい
当たり前にできていることができないことに理解をしてもらうのが大変でした。
「車の運転ができない男はつまらない」
「空気が読めないから楽しくない」
「周りの雰囲気だけで具合が悪くなるなんて頼りない」
など、特性ゆえの苦労を受け入れてもらえないこともありました。
双方の両親の理解が必要
結婚になると、「家」と「家」のつながりがあります。先ほど偏見の話をしました。障害について、全く偏見がない方もいます。しかし、当事者同士が合意していても、相手の両親が偏見を持っている場合があります。
この場合、偏見というより「相手が障害者で大丈夫なのかな…」という心配が強いです。事実、筆者も両親の反対から結婚を断られたことがあります。
自己理解を深めて、家庭での役割を明確にすれば結婚もできる
ここまでは、「結婚できない」要件ばかりを紹介しました。しかし、障害を個性として、あなたの特性を求める方も必ずいます。筆者の例を挙げて紹介しましょう。
【筆者の例】
こだわりが強すぎて融通が利かない性格→柔軟で臨機応変な対応ができる方が、意志を継続できる相手を求めている
この「ニーズ」を知るには、あなたがどんな特性を持つか、理解を深めることが大切です。そうすれば、家庭でのあなたの役割が明確になります。
さらに先ほどお話しした問題に関しては、筆者はこのように取り組んでいきました。
【体験談】結婚できない問題に向け取り組んだこと
あなた自身が障害に対する負い目をなくす
まず、偏見を解消する第一歩は「あなたが障害に対する負い目をなくす」ことです。「負い目」こそ、障害への一番の偏見です。
「障害者だから…」という劣等感があると、どうしてもあなたの個性よりも障害者のネガティブさや困難さが伝わってしまいます。これだと相手を不安にさせてしまいます。
そのため、あなた自身が自然に伝えられるくらいに、障害を受け入れることが大切です。
経済的以外の点でサポートする方法を身につける
残念ですが、現時点で障害を持つ方が経済的に家庭を養える可能性は低いです。そのため、経済的な支え以外の役割を身につけることが大切です。
筆者の場合は『家事』でした。社員寮にひとり暮らしをしていたとき、掃除や洗濯などを問題なくこなせてしていました。
筆者が転職先にテレワークを選んだのは、障害特性を考慮したことが一番の理由です。しかし、「通勤時間や通勤に要する準備時間を家事に使いたい」理由からも、テレワークを希望していました。おかげで、就職前とほぼペースを変えることなく、家事ができています。
ただしもちろん、専門職などで高い経済力を持っている方は、 経済的にサポートすることも考えていけます。
良く話せて、気を許せる相手を選ぶ
一緒にいて気を許せる相手でないと、生活が苦しくなってしまいます。出会って話す段階で話が噛み合わない方とは、結婚を考えないようにしました。
特性を理解してもらうには、良く話すしかありません。生活のあらゆる場面で特性を説明する機会があります。特性を説明するたび喧嘩になるようでは疲れてしまいます。そのため、「こんなときに困るんだ」と自然に話せるような相手を選びました。
相手の個性を理解する
筆者自身、強い個性があることを自覚しています。だからこそ、相手の(障害でなくとも)大きな欠点があっても受け入れると決めていました。
個性と認めてもらうには、相手の性格を個性として理解することを大切にしました。
相手の両親には口頭ではなく、態度や行動で示した
やはり相手の両親は、どんなに相手から「障害者でも問題ない」と聞いていても心配するものです。筆者自身、口頭でどんなにアピールしても、伝えられないと感じていました。
筆者の場合ですが、結果として行動で示す形になりました。
偶然ですが、相手の親戚がなくなり、諸事情から相手が喪主になりました。そのときに急でしたが仕事は有給休暇を取り、ずっと相手についてサポートをしました。
「一週間仕事を休んでまで自分の子供のサポートをしてくれた」と、相手の両親が安心してくれました。
障害者同士だと結婚できない!?
理解できる要素は多いが、相性に障害の有無は関係ない
筆者は「障害者同士の方が理解し合えるのでは」と考えたことがあります。
確かに、お互い特性が顕著に現れていて、近い境遇を経験しています。そのため、理解し合える要素は多いです。しかし、筆者はうまくいきませんでした。同じ障害者でも、相手の全てに共感することは無理です。従って相性に関しては、障害の有無は関係ないのではないでしょうか。
仕事・働き方に悩んでいたら。『Salad』が強みを活かす就職のサポートをします
今回は結婚について体験したことを紹介してきました。筆者もそうですが、発達障害を持つことで職場でも様々な苦労をしてきました。そのように働き方や職場について悩んでいたら、このサイト『Salad(サラダ)』までご相談ください。
おわりに
【お互いが偏見なく結婚するために】
最終的には筆者は、障害を持たない方と結婚しています。もちろん、筆者が障害を持っていることは知っています。障害を持たない方に偏見を求めないように、障害を持つ方も「障害がない人」という偏見をしないことが大切です。
お互いをひとりの人間として見る相手ができれば、結婚に近づけるのではないでしょうか。
【筆者紹介】
Salad編集部員。1980年生まれの男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受ける。昨年結婚。妻の勧めで転職を決意。就労移行支援事業所に通っていたため、結婚を決めた直後に無職になった。妻の理解を受け、現在は強みを活かした就職が実現している。